ブログ… 「コーチはリーダーである。リーダーはコーチである」
by y-coach_net
カテゴリ
全体
イベントのお知らせ
黒木さんのコーチング
山口チャプター
メンバー紹介
ほぼ日記
本の紹介
リンク
未分類
リンク
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


安心と変化のコミュニケーション…「安心と変化 2」

Nさんは小柄で可愛らしい表情と同時に理屈っぽさと負けず嫌いな性格を持っているスタッフで、要するに良くなるも悪くなるもマネージャがその力量を問われるタイプのスタッフだ。リーダーシップで引っ張ることができれば強い戦力になるし逆なら不平不満の発信源になる。

「きまりはきちんと守らなければダメ」という性格のNさんが、「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」というこの課題を提案してくれ、彼女自身もまだ新人といえるキャリアにも関わらず立候補でタスクチームのメンバーになってくれている。

「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」という課題に取り組むタスクチームを組んで2週間が過ぎ、それなりに良い結果を出しているのだがそれにしてはNさんの表情に緊張感がある…落ち着いて観察して見ればほかのスタッフも何かプラスαのプレッシャーを発しているようすだ。

この「感じ」こそノンバーバル・メッセージの信号で、以前に書いたようにここに視点の変化のチャンスが隠されている。だからこのタイプの違和感を感じたときはコミュニケーションの探偵になったつもりでそれこそ徹底的にそのメッセージの正体を暴かなければならない。

ちなみにその「感じ」がまったく的はずれということももちろんある。だが「的はずれであることがわかる」ということも「的にあたる」と同じくらい重要で、それがわかれば相手のメッセージには特に問題が無いことが明確になるわけである。

提出してもらったご利用者の遅刻率のグラフをもとに、まずは「明確に結果が出てる」ことを承認し、その後違和感の「調査」に入ることにした。この時大事なのは相手のメッセージに「私は違和感を感じている」ということ率直に伝えることだ。

「意図」を隠した質問は、クライアントに不安や疑念を生み出すことになる。目的不明な質問を受けることによって、クライアントは「コーチは何を知ろうとしてるんだろう?」「私はこれからどうされてしまうんだろう?」という疑念に注意が集中してしまう。

「なんだかわからないけど、何かを調べられるのかも…」などと相手に思われたら、そこでクライアントのボールはストップする。コーチにはクライアントの行動の変化を生み出すためのある程度の計画は必要だが、それを率直さと共存させなければならない。

要するにできるかぎりボールを真っ直ぐに投げるということだ。コーチが率直であれば、必ずしもクライアントが率直になるとは限らないが、少なくともボールは投げ続けてもらえる。そこでひととおり状況の説明を聞き終わった私はその「違和感」を率直に伝えることにした。

「2週間でこれは明確な成果。嬉しい。と同時に成果の報告をしながらもみんなが何かまた別のプレッシャーを感じてるように感じるんだけど違うだろうか?」

実際は彼らはもう、言葉になってないプレッシャーについてキャッチボールすることに慣れているので、その問いかけで全体の雰囲気がむしろ柔らかくなっていく。これからプレッシャーの正体を暴く作業ができ、その先に安心感が生まれることを彼らもすでに知っているのだ。

Nさんが手をあげて答え始める。

「確かに遅刻をするご利用者が減って嬉しいんですが、遅刻する人はだいたい同じ人なので、逆に間に合った時になんと言ってあげたら良いのかわからなくて…。毎回「頑張りましたね」とか「また頑張ってくださいねだけでいいのか…。同じことの繰り返しで相手にちゃんと伝わるのかどうかわからなくて…」。ほかのスタッフもそれを聞いてうなずいているのである。

Nさんの発言は、もともとの問題点、「ご利用者にどうやってリクエストするか?」ことをクリアしたからこそ出てくる疑問点だ。「リクエスト」に応えて、良い結果を出してくれた相手に対して、自分感じていることをどう伝えるのか…要するに「ご利用者どうやっをて『承認』するか?」というさらに高い次元での課題…それが彼らが感じているプレッシャーの正体だった。

実はこの時点で彼らはもう答えを知っていると言える。「成果を出した人には承認が必要である」ということを充分に感じとっているからこそ、その次に承認が必要なことを理解しているのだ。一方彼らの問題は単に承認のバリエーションが無いことだ。そこで私は「事実承認」と「一人称のメッセージ」の2つを加えて彼らに伝えることにした。

「まずは相手の事実を承認すること。5分早く来た人には『5分早く来てもらえましたね』、2回続けて遅刻しなかった人には『2回続けて時間通りに来てもらえましたね』とだけ伝える。良い結果を出していることをあなたたちがちゃんと見ていることを伝えるだけで相手はまた同じことをやりたいと思うようになるんだ。事実を正確に言葉して相手に伝えること。単純だけど効果的だよ」

「なるほどそうか」の表情が消えないうちにもう1つつけ加えてティーチングする。

「その上でさらに声をかけてあげたかったら、『よく出来ましたね』とか『立派ですね』などで誉めるのではなく一人称であなた達の気持ちを伝えてあげること。『今日時間通りに来てもらったので、私はとても安心しました』。…私からあなたへ責任を持って伝える言葉は必ず伝わるんだよ」

それから幾日か後、Nさんに状況を確認して見ると…

「遅刻が多いTさんがちゃんと時間通りに来てくれたんで『時間通りに来てもらえましたね。とても嬉しいです』と事実承認と1人称のメッセージを伝えました。そうしたら…今日も、たった1分前ではあるけど時間前にちゃんと来てくれました」。Nさんに嬉しそうな表情が生まれている。

遅刻の多いTさんにとって1分前に来ると言うのは、実はかなり大変なことなのだと思う。なぜならそれはTさんにとっては「こころの癖」に沿ったやむを得ない行動だからだ。「一分前に間に合う」という事実こそTさんが自分の「こころの癖」と格闘している証拠なのだ。

①「リクエスト」

②「事実承認」

③「一人称のメッセージ」

「こころの癖」への処方箋だ。人はなかなか変わらないし、変わるとしてもそれはひとつひとつの行動の積み重ねだ。だからこそひとつの行動に「リクエスト」、ひとつの行動に「事実承認」、ひとつの行動に「一人称のメッセージ」…

コーチ自身もひとつひとつの行動を積み重ねることが、クライアントの行動の変化を促すポイントになる。

研修委員:黒木雅裕
[PR]
by y-coach_net | 2008-08-19 23:14 | 黒木さんのコーチング
<< 本の紹介…文藝春秋社刊 「チー... DVDの紹介…周防正行監督作品... >>