ブログ… 「コーチはリーダーである。リーダーはコーチである」
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<   2008年 08月 ( 14 )   > この月の画像一覧

安心と変化のコミュニケーション…「こころの癖」

コーチングや職場のコミュニケーションで必ず直面するのが、クライアントやスタッフの「こころの癖」です。

例えば今私の職場では「安心の声かけタスク」という課題にとりかかっていて、職場での基本的なコミュニケーションをスタッフやご利用者にとって安心感のあるものに進歩させていくことが目標となっています。

「誰から誰へを明確にする」「言葉をキャッチボールする」「声と体と表情とジェスチャーで伝える」などいくつかのガイドラインをもとに挨拶や質問、報告や相談などの具体的なやりとりを相互にチェックする取り組みです。

例えば「視線を合わせる」という項目があるのですが、これ1つをとっても取り組むスタッフの反応はさまざまです。苦もなく充分な時間視線を合わせることができるようになる人もいれば、月単位でやっと小さな変化が生まれた人もいます。

これは善し悪しではなく、その人が持っている「こころの癖」による行動のパターンが固定されたものです。

視線を合わせることが苦手な人の心理的な反応はおよそ二つに分かれます。

ひとつは基本的にあまり他人の感情の影響を受けない人で、良く言えば目的意識の強い人間、悪く言えば共感の力の弱い人間です。

この型の心理反応は他人の視線から「相手の心理を推察する」必要が少ないので相手に視線を合わせる優先順位が低くなります。

高度経済成長時代の成功者にはこのタイプが多かったと感じます。立志伝中の人物も多いかわりに、その困った逸話にも事欠かないのがこの時代の成功者の特徴です。

しかし現在の社会状況では、そのタイプの視線を合わさない心理反応は減少しています。

常に社会や共同体の視線を意識して、鋭利な緊張感を持って他人との距離を取らなければならないのが、半ば強制的に基調低音として流れている現在の社会の暗黙のメッセージです。

ですから現在の社会では、それを反映して相手の視線への不安や恐怖からその行動パターンを選択する傾向があります。「人は人、自分は自分」を許さない社会圧力の時代とも言えるかもしれません。

ですから現在の心理的な反応は、この社会的圧力に過剰適応して、相手への感情的圧力を回避する、要するに「他人の視線が怖くて目を合わせられない」人の割合が高くなっています。

ですから、現在では「視線を合わせる」という行動の変化1つをとっても、個人の「こころの癖」と社会的な「こころの癖」の双方にアプローチする必要があるのです。

「安心の声かけタスク」で言えば、私たちの職場では、視線を合わせるのがコミュニケーションの標準であり、安心して視線を合わせていいのだという「社会的なコンセンサス」を作ることがまず第一に必要です。

その上で、スタッフの属性に合わせた個別のフィードバックを行って、「視線を合わせる」質と量の平均値を上げていくことになります。

実際、仕事への責任感と意志の強さを充分に持っているけれども、どうしても視線を合わせるのが苦手でミーティングなどで参加者に不安を感じさせる割合の高かったスタッフのMさんも、職場での「視線を合わせるコンセンサス」を理解し、他のスタッフからのフィードバックが積み重なることによって、充分に「視線を合わせる」体力を獲得することができました。

「こころの癖」は、個人の資質と成育過程、そして共同体の社会的圧力という要素によって形成されます。

1.セッションや職場のコミュニケーションの目標をコンセンサスすること
2.正確な技術にのっとったフィードバックを行うこと

「こころの癖」は、不安感によって反射的にその歪みを強める性質があります。社会的不安を乗り越え、クライアントやスタッフの「こころの癖」に変化を生み出すためには、この二つのポイントを常に意識することが必要です。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-30 22:30 | 黒木さんのコーチング

今日を生きるコーチングの言葉 1

「変えることが出来ることを変えて行く勇気と 、
   変えられないものを受け入れる寛容さと、
      そして変えることがが出来るものと出来ないものを
                      識別する知恵を与えてください」

……キリスト教の祈りの言葉

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-27 00:05 | 黒木さんのコーチング

本の紹介…文藝春秋社刊 「チーズ図鑑」

時々わけがわからないほど強い存在感を発している食べ物があります。目にした瞬間からこれは食べ物以外何ものでもないだろうと感じさせる食べ物たちです。

僕にとってそれは例えば「バナナ」です。僕はバナナを見るたびにその食べ物としての存在感にあきれる思いをします。

薄い皮で覆われているだけで中身はまるごと甘くてやわらかい果肉。タネすらはいっていなくてその果肉のすべてが丸ごと栄養の固まり。その上皮をむいていくと、なんとその皮までが、僕たちが手をよごさずに食べることができるための取っ手になってしまうという…

僕はバナナを最初に一囓りするたび、「ああバナナという存在は、本当に食べられるためだけに生まれてきたのだなあ」などとひとしきり感慨を感じてしまいます。

僕にとってのもう一つの「絶対食べ物」、それはチーズです。

チーズもバナナ以上に、その食べ物としての存在感を、形、色、におい、味、そして質感などそのあらゆる面から漂わせる、食べ物中の食べ物です。僕にして見ればその名前の響きだけで唾液が分泌される類の食べ物です。

もちろんチーズはその視覚的な存在感の強さだけではなく、タンパク質、カルシウム、ミネラルの集合体である動物のミルクを、いつでもどこでも食べられる保存食に転換した正真正銘の完全栄養食品です。

「チーズ図鑑」は初版が1993年。にも関わらず現在でも増刷され続けている、その名の通りチーズだらけの図鑑です。総計435種類、8割がフランス、2割がその他各国のチーズを1984年からほぼ10年間に渡り取材した大作です。

何が凄いといって、ページを開いても、ページを開いても…まああたり前のことですが、そこにはチーズ、チーズ、チーズなわけです。

チーズの全体写真、内部を見せるために三角にカットした写真、熟成される前と後の写真、ミルクの種類、産地、歴史、そして言葉と取っ組み合いをした上に組み立てられたその味わいの表現…

一言で言えば「チーズ好きにもほどがある」本なのですが、ただ眺めているだけでこんなに動物的に食欲を刺激される本も珍しいわけです。ダリの「蕩ける時計」のモチーフになった蕩けるチーズの写真も満載で、著者が噛り付く思いで取材している様子が実感されます。

現地に住みこんでいる日本人が主にヨーロッパ全域を股にかけて取材し、1000種の中から厳選して選んだチーズたちですから、どれもこれも写真だけでも魅力的なのは当たり前ですが、チーズを通した歴史の風景も感じられる楽しさもあります。

5000年前からの歴史があると言われるチーズ、本格的に流通し始めたのはやはりローマ帝国が隆盛を誇った時代で、ローマの食文化の薫陶を受けた修道士たちがヨーロッパ各地に散開してチーズ文化を各地に植えつけていったのです。

ですから、その修道院の名前がついたチーズも数多くあり、なぜかその名前まで強烈に「うまそう」に聞こえるのが不思議です。パンをキリストの体、ワインをキリストの血として行う聖餐の儀式に見られるように、人間の生命と聖性を融合させる文化がその背景にあるからかもしれません。

チーズによってはある村のひとつの場所だけでつくられていて、そこに行かなければ食べられないものも掲載されていて、インターネットのお取り寄せなど受け付けない贅沢感もこの本のたまらない魅力と言えます。

ちなみに人間の精神状態と食欲は密接にリンクしています。

ストレスや過剰なプレッシャーにさらされると人は食欲という根元的欲求すら低下させてしまうほど神経優先の動物です。見方を変えれば現在の社会的プレッシャーは、過敏になった神経が本能の欲求を抑圧してしまうほど複雑かつ巨大なものになっています。

チーズを見て食べたくてたまらなくなったり、あるいはその逆にその強烈な臭いを連想して見るのもいやになるような欲求がある時、私たちの神経は健全でバランスがとれています。逆にもしこの「チーズ図鑑」を見て、お腹のあたりが何も反応しないようであれば、こころが疲れている証拠かもしれません。

そんな本能のリトマス試験紙「チーズ図鑑」は、チーズとワイン好きの日本人女性3人が、10年と言う年月をかけてつくりあげた、「究極の豊穣体験マニュアル」です。ぜひご一読を。そして本能においしい「喝」を入れてあげてください。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-23 20:24 | 本の紹介

安心と変化のコミュニケーション…「安心と変化 2」

Nさんは小柄で可愛らしい表情と同時に理屈っぽさと負けず嫌いな性格を持っているスタッフで、要するに良くなるも悪くなるもマネージャがその力量を問われるタイプのスタッフだ。リーダーシップで引っ張ることができれば強い戦力になるし逆なら不平不満の発信源になる。

「きまりはきちんと守らなければダメ」という性格のNさんが、「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」というこの課題を提案してくれ、彼女自身もまだ新人といえるキャリアにも関わらず立候補でタスクチームのメンバーになってくれている。

「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」という課題に取り組むタスクチームを組んで2週間が過ぎ、それなりに良い結果を出しているのだがそれにしてはNさんの表情に緊張感がある…落ち着いて観察して見ればほかのスタッフも何かプラスαのプレッシャーを発しているようすだ。

この「感じ」こそノンバーバル・メッセージの信号で、以前に書いたようにここに視点の変化のチャンスが隠されている。だからこのタイプの違和感を感じたときはコミュニケーションの探偵になったつもりでそれこそ徹底的にそのメッセージの正体を暴かなければならない。

ちなみにその「感じ」がまったく的はずれということももちろんある。だが「的はずれであることがわかる」ということも「的にあたる」と同じくらい重要で、それがわかれば相手のメッセージには特に問題が無いことが明確になるわけである。

提出してもらったご利用者の遅刻率のグラフをもとに、まずは「明確に結果が出てる」ことを承認し、その後違和感の「調査」に入ることにした。この時大事なのは相手のメッセージに「私は違和感を感じている」ということ率直に伝えることだ。

「意図」を隠した質問は、クライアントに不安や疑念を生み出すことになる。目的不明な質問を受けることによって、クライアントは「コーチは何を知ろうとしてるんだろう?」「私はこれからどうされてしまうんだろう?」という疑念に注意が集中してしまう。

「なんだかわからないけど、何かを調べられるのかも…」などと相手に思われたら、そこでクライアントのボールはストップする。コーチにはクライアントの行動の変化を生み出すためのある程度の計画は必要だが、それを率直さと共存させなければならない。

要するにできるかぎりボールを真っ直ぐに投げるということだ。コーチが率直であれば、必ずしもクライアントが率直になるとは限らないが、少なくともボールは投げ続けてもらえる。そこでひととおり状況の説明を聞き終わった私はその「違和感」を率直に伝えることにした。

「2週間でこれは明確な成果。嬉しい。と同時に成果の報告をしながらもみんなが何かまた別のプレッシャーを感じてるように感じるんだけど違うだろうか?」

実際は彼らはもう、言葉になってないプレッシャーについてキャッチボールすることに慣れているので、その問いかけで全体の雰囲気がむしろ柔らかくなっていく。これからプレッシャーの正体を暴く作業ができ、その先に安心感が生まれることを彼らもすでに知っているのだ。

Nさんが手をあげて答え始める。

「確かに遅刻をするご利用者が減って嬉しいんですが、遅刻する人はだいたい同じ人なので、逆に間に合った時になんと言ってあげたら良いのかわからなくて…。毎回「頑張りましたね」とか「また頑張ってくださいねだけでいいのか…。同じことの繰り返しで相手にちゃんと伝わるのかどうかわからなくて…」。ほかのスタッフもそれを聞いてうなずいているのである。

Nさんの発言は、もともとの問題点、「ご利用者にどうやってリクエストするか?」ことをクリアしたからこそ出てくる疑問点だ。「リクエスト」に応えて、良い結果を出してくれた相手に対して、自分感じていることをどう伝えるのか…要するに「ご利用者どうやっをて『承認』するか?」というさらに高い次元での課題…それが彼らが感じているプレッシャーの正体だった。

実はこの時点で彼らはもう答えを知っていると言える。「成果を出した人には承認が必要である」ということを充分に感じとっているからこそ、その次に承認が必要なことを理解しているのだ。一方彼らの問題は単に承認のバリエーションが無いことだ。そこで私は「事実承認」と「一人称のメッセージ」の2つを加えて彼らに伝えることにした。

「まずは相手の事実を承認すること。5分早く来た人には『5分早く来てもらえましたね』、2回続けて遅刻しなかった人には『2回続けて時間通りに来てもらえましたね』とだけ伝える。良い結果を出していることをあなたたちがちゃんと見ていることを伝えるだけで相手はまた同じことをやりたいと思うようになるんだ。事実を正確に言葉して相手に伝えること。単純だけど効果的だよ」

「なるほどそうか」の表情が消えないうちにもう1つつけ加えてティーチングする。

「その上でさらに声をかけてあげたかったら、『よく出来ましたね』とか『立派ですね』などで誉めるのではなく一人称であなた達の気持ちを伝えてあげること。『今日時間通りに来てもらったので、私はとても安心しました』。…私からあなたへ責任を持って伝える言葉は必ず伝わるんだよ」

それから幾日か後、Nさんに状況を確認して見ると…

「遅刻が多いTさんがちゃんと時間通りに来てくれたんで『時間通りに来てもらえましたね。とても嬉しいです』と事実承認と1人称のメッセージを伝えました。そうしたら…今日も、たった1分前ではあるけど時間前にちゃんと来てくれました」。Nさんに嬉しそうな表情が生まれている。

遅刻の多いTさんにとって1分前に来ると言うのは、実はかなり大変なことなのだと思う。なぜならそれはTさんにとっては「こころの癖」に沿ったやむを得ない行動だからだ。「一分前に間に合う」という事実こそTさんが自分の「こころの癖」と格闘している証拠なのだ。

①「リクエスト」

②「事実承認」

③「一人称のメッセージ」

「こころの癖」への処方箋だ。人はなかなか変わらないし、変わるとしてもそれはひとつひとつの行動の積み重ねだ。だからこそひとつの行動に「リクエスト」、ひとつの行動に「事実承認」、ひとつの行動に「一人称のメッセージ」…

コーチ自身もひとつひとつの行動を積み重ねることが、クライアントの行動の変化を促すポイントになる。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-19 23:14 | 黒木さんのコーチング

DVDの紹介…周防正行監督作品 「それでもボクはやってない」

「Shall we dance?」の大ヒットを持つ周防正行監督ですが、彼のことを語るにはまず「マルサの女」で有名な故・伊丹十三監督のことから始めなければなりません。

周防監督は、伊丹作品の助監督出身で「マルサの女」「マルサの女2」「ミンボーの女」などのメイキングビデオの制作監督でもあり、一部では本作よりメイキングビデオの方がおもしろいのでは?と噂が立つほどその才能が話題になる存在でした。

僕自身もまだ周防さんの名前をほとんど知らないまま、ドキュメンタリー性と娯楽性を見事に融合させているそのメイキングビデオの作品群を夢中になって視聴していたものでした。

「Shall we dance?」にいたるその後の映画監督としての活躍は多くの人に知られているところですが、僕が関心があるのは周防監督の「Shall we dance?」後の「失われた(ように見える)10年」です。

周防監督は「Shall we dance?」という大ヒット作品を成功させたにも関わらず、その後10年間映画を撮っていない…

しかし「Shall we dance?」にいたるまで倍々ゲームでヒット作を作り続けた監督に制作の依頼や要請が無いはずがない。また作品性の高い周防監督に表現したいテーマや企画が無いということもあり得ない…

ならばこの空白期間はなんだろう?

周防作品のファンである僕は、風の便りさえもない周防作品の空白期間に時々そんな思いを持っていました。そしてその長い長い10年間が過ぎた後発表されたのは、「それでもボクはやっていない」というなんとも愚直で地味なタイトルの作品だった…

しかし僕はその後DVDを買って繰り返し視聴するほどこの作品のファンになります。

そしてそんな自分の内面の変化とともに周防監督の、この「失われた(ように見える)10年」こそ、人が「やりたいことをやる」ということの本当の意味をはっきりと示すものだと感じるようになります。

なぜ周防監督は10年もの長い間、映画を撮らなかったのか…

あくまでも私見ですが周防監督の「失われた10年」は、伊丹十三監督の「自死」という事件に端を発していると感じます。

ヒットメーカとして知らぬ人のいない伊丹十三監督ですが、実は彼は映画制作を始める随分前から、心理学者岸田秀氏に傾倒し、彼との対談を著作として発表するほど心理分析に傾倒した人でした。

岸田氏は、義母との支配的な愛情との葛藤から自らの治療を踏まえて心理学に飛び込んだ学者です。

臨床に携わらず従来の心理学にはない概念を駆使する方法論には批判も多かったのですが、愛情に裏打ちされた承認を得ることができなくなった、現代の親と子の問題に切り込む視点はとても新鮮なものでした。

伊丹万作という偉大な父親に無意識にコンプレックスを感じていた気配が強い伊丹監督も、そんな岸田氏の経験や視点に共感を覚えていたのではないかと思います。

伊丹さんの演技、著作、そして映画作成での尋常ではない完璧さの追求を見るにつけ、成育のプロセスで本当の意味での承認を受けることができなかった人間の、不安と焦燥にいろどられた神経症の深淵を見る思いがします。

しかし伊丹監督は俳優という受動的な職業の限界を超え、自分の才能を全開できる映画監督として成功の巨大な果実を得ます。伊丹監督は、映画をヒットさせることによって、自らの父親を超える「完璧な他者評価」を受けることになります。

しかしそんな絶頂期にも関わらず、周防さんのメイキングビデオは、伊丹監督の、世界を完璧で切り裂くような、張りつめた神経を感じさせる撮影風景を映し出していました。

偶然生まれる爆発的な演技すら、すべてのプロセスの先を読んで自分の完璧な計算の内に生み出そうとするその姿勢は、口元に浮かべた微笑みにも隠せない、刃物の上を裸足であるいているような緊張感に満ちたものでした。

そしてまるで宿命のように転換期が訪れます。

「ミンボーの女」「大病人」「静かな生活」をへて「スーパーの女」…このあたりで僕は伊丹監督が「自分のやりたいこと」と「他人に評価されたいこと」の境界線を喪失し、「何をつくるべきなのか」を見失いつつあることをはっきりと感じていました。

「マルタイの女」にいたって、ストーリーにテーマ性や人間性がほとんど感じられなくなり、衣装などの美術も、美麗を通り越してグロテスクなものに変質していました。

また取材に来た雑誌記者に、あろうことか「どんな映画をとったらみんなに見てもらえるだろうか」と質問したなどという噂が語られている状況に、伊丹さんの内面の荒廃を目の当たりにする思いで息を詰めたことを今でもはっきり思い出します。

その後僕から見れば必然的に「自死」を選んだ伊丹監督に対し、メディアの表面的な賛辞や追悼は耐え難いものでした。

ただひとつ伊丹監督への本当の意味での追悼の言葉として救いを感じたのは、その当時脳梗塞からの復帰を実現させていた映画監督大島渚が、ワイドショーの追悼コーナーで発した言葉でした。

「私が伊丹君に今いいたいのは一言、『君はあのマルタイの女という作品が君の最後の作品でいいのか?』ということです。伊丹君は本当に自分の作りたいものを作っていなかった。本当につくりたいものをつくるためになら作家はどんな苦しみにも耐えられるものです」。

人によっては死者にムチ打つと言われる言葉かもしれません。しかしその言葉はたぶんその瞬間伊丹監督が最も聞くべき、そしてもっとも聞きたい言葉であったと僕は確信しています。

精神分析療法や仕事での自己実現によって、自らの神経症を克服したかに見えた伊丹監督の「自死」は、その著書を読むことで彼の苦しみを共に追いかけていた僕にとっても大きなショックであり、それだけに大島監督の自らの生き方でもって証明をしているその言葉は深く胸に響くものでした。

周防監督はその伊丹監督の生き様をそのまま目にし、そしてある時期まさに重ね合わせて生きてきた人です。ですから周防監督の、特に初期の作品は、伊丹作品と重ね合わせられるほどその味わいが似ている。

それなのにというかだからこそというか…周防監督はおそらくはそんな伊丹監督をよく知っていたからこそ…伊丹監督とは違う道を選択したのだと感じます。

10年間アイデアと才能がある作家がひとつの作品もつくらないというのは、自分の存在証明をすべて失いかねない危険性がある行為ですし、たぶんヒットだけを目的にした作品を作らせるためにお金を出す映画会社はいくらでもあったはずです。

しかし彼は作らなかった。

なぜなら彼は作家にとってもっとも大切なことは「自分のつくりたいものを作り続ける」ことであって「他人に評価される」ことではないこと、それどころか「自分の作りたいもの」を見失うことが作家としてそして人間としてどれほど危険なことか痛いほどを認識していたのだと思います。

「自分の作りたいものを作る」…その軸を失ってしまえば「作家」はその存在意義を自ら消滅させてしまう…

そしてつくられた「それでもボクはやっていない」は、配役を見ても、題名を見ても、そしてタイトルを見ても、どれひとつとしてヒットの予感が無いものばかりです。にもかかわらずこれがとてつもなくおもしろい作品であるから世界はおもしろいと思うのです。

主人公のフリーターの青年が、就職のために面接を受けるその朝、痴漢のえん罪を受け、そこから日本の司法という迷宮に迷い込んで、葛藤し、戦い、成長する物語です。

特に主人公をサポートする、同じくフリーターでパチンコ好きの友達が、事件との直面を通して、専門家なみの自信で法律の解釈を話し始める居酒屋のシーンは、何か日本のこれからの希望のあり方の一端を暗示しているようで、僕の一番好きなシーンです。

日本が国家として成熟したがゆえに生まれてきた社会の無数の歪み、複雑にからみあい人間のエネルギーを見えないところで奪い去る社会の強烈な捻れを、正確に、シンプルに、そしておもしろく描いた傑作です。

基本的に映画は娯楽ですが、時おり人の生き方や社会を変えるほどの威力を持った作品が、意志と才能のある作家から生まれるような気がします。

周防正行監督作「それでもボクはやっていない」が、DVDのレンタルショップで思いのほか多くの人に借りられているのを見る度、その思いが僕の中に去来します。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-15 20:02 | 本の紹介

安心と変化のコミュニケーション…「安心と変化 1」

私の職場で「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」という課題があり、解決のためのチームを組んでミーティングをスタートした。

最初はスタッフの、ご利用者への心理的な向き合い方の見直しだ。あるスタッフからまず最初に出た「ご利用者へは下から接するのが必要なので…」という言葉で今の基本スタンスが推測できた。

どうやらご利用者へ丁寧に接することと迎合することを混同しているようだ。

丁寧さの無い意思表示はわがままと同じだし、また意思表示の無い丁寧さは単なる卑屈さにほかならない。どちらにしても相手に反発もしくは増長をもたらし対等な関係を結ぶには不適切な対応といえる。

ここはまずはティーチングからだ。職場のビジョンに照らして、丁寧である必要はあるけれどもそれは私たちがご利用者に下から上の目線で接することではないことを説明した。

私たちの仕事の役割と責任を明確にし、そこから逆算してご利用者に守ってもらうべき規則と義務を明確にする作業だ。

その作業を通じて出てきたのは「水平な目線でご利用者に接する」という言葉だ。

スタッフは当然果たすべき役割を責任を持って果たす。そしてご利用者にも守るべき規則と義務を丁寧にしかし明確に伝える…スタンスの変化によってスタッフの中に何をする必要があるのかそしてどうしたいのかが生まれ始める。

チームからは、遅刻の多いご利用者の、その頻度と理由に応じて「青対応」「黄対応」「赤対応」という3つのパターンを作成し、シミュレーションによるトレーニングを行うアイデアが出てきた。

対応マニュアルをつくり、机上での読み合わせを終え、スタッフが役割を分担していよいよシミュレーションのスタートだ。

ここまでグループコーチングでイメージを充分に明確化しただけに、その後展開した光景は逆にとても興味深いものだった。

それだけ水平な目線のイメージを組み立てたにも関わらず、あるいは目の前に自分たちでつくった対応の手順表があるにも関わらず、スタッフの多くが反射的に過去の行動パターン、すなわち「下から接する」対応に戻ってしまうのだ。

人によっては手に持った手順表に目を落としているのに今までどおりの発言に終始する。

事前の決定でもっとも大切なことは、「ご利用者に時間を守ることをリクエストする」ということだ。ところが実際にシミュレーションをスタートしてみると…「リクエスト」どころか「依頼」悪くすると「懇願」してしまうありさまだ。

人間の「こころの癖」はとても強固なものだ。

「人間脳」より上位にある「動物脳」あるいは「は虫類脳」の「不安」や「欲動」が「こころの癖」の基盤なので、「意識して変化させる」という「人間脳」の働きだけでそのパターンを変化させることはかなり困難だ。

コーチングしたりあるいは自分がコーチングを受けたりしても、なかなか変化が現れないことがあるのもこのあたりに理由がある場合が多い。

行動の変化をもたらすには、最低でもクライアントの「動物脳」にアクセスする必要があるのだ。

「こころの癖」の強固さをあらためて感じるとともに、事前にプレッシャーを体験し、プレッシャーがあったとしても行動は変化させられること、そしてそれをリーダーやマネージャーと共有して安心感を持つことの大切さを再認識する結果になった。

「プレッシャー」とは状況やコミュニケーションに対する「恐怖感」と「不安感」だ。

「恐怖感」と「不安感」は、「人間脳」の作り出したイメージを引き金にして生まれる「動物脳」と「は虫類脳」による情動的、感覚的反射だ。

だから視覚、聴覚、体性感覚および思考のすべてに働きかけ、さらには自分がチームの一員として安全に行動していることを実感できて、初めてその反射を乗り越え、行動を変化させることができることになる。

そこでミュレーションの第一目標を、スタッフ間のコミュニケーション強化によって「安心感」を生み出すことに変更し、対話の量に焦点をあて、それを増大させながらトレーニングをすすめた。

同時に「できていないところ」「こうすればもっとよくなるところ」のフィードバックを私が担当し、コーチングのセオリー通り「記述的に伝える」「一人称で自分の感じたことを伝える」を行った。

シミュレーションでのスタッフの発言や笑顔が高まるにつれ、かれらの対応パターンが「水平な目線」に改善されていく。

「安心感は変化の最低条件」…こういう体験の度に頭に浮かぶ言葉だ。

遅刻率90%削減を目標して、改善スタート。あまり間をおかず結果が出てきた。

1週目…77%減
2週目…53%減

結果の出やすい初期の成果としても立派なものだ。

3週目、4週目とどのような変化が生まれるか興味深いところだ。その後のフォローミーティングでさらに対応のステップアップを図ったのでおそらく結果は向上するだろう。

だが仕事にはいつも「予測不可能性」がある。だからいつも「安心と変化」のコミュニケーションを意識していこうと考えている。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-13 00:39 | 黒木さんのコーチング

小さなコーチングの大きなポイント

山口チャプター第2回勉強会にて特別プレゼントされた
「小さなコーチングの大きなポイント」

この小冊子の感想・質問をお待ちしております。
こちらにご記入いただくと、黒木コーチへ届きます。


また、今までのシリーズが読みたい方へ
下記にまとめましたので、どうぞ、ご覧ください。


小さなコーチングの大きなポイント…「目標を設定する」
http://ycoachnet.exblog.jp/8055388/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 1
http://ycoachnet.exblog.jp/8060356/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 2
http://ycoachnet.exblog.jp/8088044/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 3
http://ycoachnet.exblog.jp/8093988/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 4
http://ycoachnet.exblog.jp/8100081/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 5
http://ycoachnet.exblog.jp/8118248/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 6
http://ycoachnet.exblog.jp/8141832/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 7
http://ycoachnet.exblog.jp/8156054/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 8
http://ycoachnet.exblog.jp/8194905/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 9
http://ycoachnet.exblog.jp/8203512/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 10
http://ycoachnet.exblog.jp/8209384/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 11
http://ycoachnet.exblog.jp/8220688/


小さなコーチングの大きなポイント…「簡潔に話す」 12
http://ycoachnet.exblog.jp/8230844/



小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 1
http://ycoachnet.exblog.jp/8264265/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 2
http://ycoachnet.exblog.jp/8277223/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 3
http://ycoachnet.exblog.jp/8283918/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 4
http://ycoachnet.exblog.jp/8295389/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 5
http://ycoachnet.exblog.jp/8317682/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 6
http://ycoachnet.exblog.jp/8323408/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 7
http://ycoachnet.exblog.jp/8334979/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 8
http://ycoachnet.exblog.jp/8346293/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」 9
http://ycoachnet.exblog.jp/8362420/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」10
http://ycoachnet.exblog.jp/8379061/


小さなコーチングの大きなポイント…「コーチングの流れ」11
http://ycoachnet.exblog.jp/8379369/



小さなコーチングの大きなポイント…「新人を育てるスタッフになる」
http://ycoachnet.exblog.jp/8173225/


小さなコーチングの大きなポイント…「新人を育てるスタッフになる」2
http://ycoachnet.exblog.jp/8244835/


小さなコーチングの大きなポイント…「新人を育てるスタッフになる」3
http://ycoachnet.exblog.jp/8303099/

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by y-coach_net | 2008-08-13 00:38

Forefront=最先端のコミュニケーション

カールゴッチという昭和の有名なプロレスラーが「日本人はこの地球上で最もプロレス好きの生き物である」という名言を残したように、どういうわけか日本人はやたら格闘技が好きな民族であることはまちがいない。

なにしろ総合格闘技という、もともととてもマイナーな格闘技の分野を世界規模の競技に育て上げてしまったのだから考えてみればわけのわからない民族だ。

総合格闘技とは簡単に言えば、パンチを打つ、キックする、投げる、関節技をきめるなど格闘技のあらゆる技を使うことを許される競技で、誤解を恐れずに言えば「極限まで洗練されたケンカ」とも言える格闘技だ。

日本の柔術が源流となって世界を席巻し、ロシア、タイ、ブラジル、オランダそしてもちろん日本などのあらゆる格闘技のエッセンスを吸収しながらたぶん今世界でも最もその進化率が高いスポーツだ。

進化率で言えば、現在のコミュニケーションもその進化率は相当に高い。

インターネット、携帯、チャット、メール、新口語体の発生、旧口語体への回帰、コーチングそしてブログ。

国家としての共通目標や共通モラルが希薄になった現在、あらゆる人があらゆる手段を使ってなんとか他者とつながっていようとコミュニケーションを進化させ、情報というリングの中でその覇権を巡る争い現在進行形で行われている。

総合格闘技はプロレスが衰退し、ボクシングが弱体化した「格闘技の荒野」から登場した新しい文化だ。現在のコミュニケーションの進化も、市場社会のスピードが旧来のコミュニケーションを弱体化させた「意思疎通の荒野」からうまれた新しい文化だ。

進化した総合格闘技は場所をアメリカに移してまたあらたな最先端=forefrontを描き続けている。

仕事を超えて格闘技を作りあげる、こころが沸騰している人たちが、その生命を燃料にしてアスリートの新世界を作り続けている。だからおそらく近い将来、総合格闘技はバレエ以上の身体芸術になる。

最先端のコミュニケーションはおそらくコーチングをも超えていく。

forefront=最先端のコミュニケーションは総合格闘技のように早く美しくそして強い作品になるだろうか?それともそれが生み出す利潤で共同体を切り裂く市場社会の道具となるだろうか?

それはおそらくこれから私たちが、こころを沸騰させ生命を燃料にしてコミュニケーション作り続けることができるかどうか、そんな単純なことにかかっている。

研修委員:黒木雅裕
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by y-coach_net | 2008-08-13 00:38 | 黒木さんのコーチング

山口チャプター 第2回勉強会 終了

8月3日(日) 周南市市民館 にて、山口チャプター第2回勉強会が行われました。

暑い中お集まり頂いたみなさん。ありがとうございました。


午前の部(応用編)
テーラーメイド(個別対応)であなたもネイティブコーチ!


味村コーチをワークリーダーに迎え、
「ネイティブコーチ」
「優位感覚」
について勉強しました。

ネイティブコーチとは、もともと相手の能力を引き出すことが上手い人のこと。

私たちの身近にもネイティブコーチはいます。
上司であったり、友人であったり、同僚であったり、先生であったり・・・

グループでどんなネイティブコーチがいるか話してみると、
具体的にこんなことがあった
こういう行動をするひと
など、さまざまな表現・意見が飛び交いました。

それを元に、自分にとってのネイティブコーチとは?をまとめ、
そのネイティブコーチになりきってのワークもありました。


応用編に参加された方は、意識の高い方が多く、積極的に発言が飛び交い
熱く語る人、すばらしい具体例を話してくれる人など、
夏の暑さに負けない熱さがありました。


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味村ワークリーダーの勉強会の様子


午後の部(入門編)
15分で成果を生み出すクイックコーチング


黒木コーチによるクイックコーチングを勉強しました。

黒木コーチは、今回の勉強会参加者への特別プレゼント
「小さなコーチングの大きなポイント」の著者でもあります。

クイックコーチング、コーチングの流れの説明の後、
黒木コーチによる「コーチングの流れ」を使ったデモンストレーション。

ビジネスコーチングの内容でした。
参加者の方にも通ずるところがあり、すごい勢いでメモをされる方が続出。
中には、すべてのやり取りをメモされている方もいました。

その後、二人組でクイックコーチングを実際にやってみることに。
その中で、課題が解決し、どう行動するかまで決まった人もでたようです。


この入門編には、初めてコーチングに触れる方から、午前から参加される方、
我々の勉強会に何度かお越しいただいた方までさまざまな方が参加されました。


初めて来られた方とワークのパートナーになられた方でよいエピソードが。

初めて来られて不安な方へそのパートナーの方が
「初めてだから分からないよね。緊張して当たり前ですよ。」
と、声をかけられ、すごく気が楽になった。


さすがです。
こういう相手を認めることができるのもコーチにとっては大切です。


学ぶだけでなく実践で使えていることがさすがですね。

そういう参加者さんに恵まれてうれしく思います。


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特別プレゼント「小さなコーチングの大きなポイント」


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黒木ワークリーダーのデモンストレーション


ご参加いただいた皆さん、ありがとうございます。
勉強会で学んだことをぜひ実践してみてください。


事務局 谷村


各ワークリーダーへの質問フォームを用意しております。
こちらからどうぞ。
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by y-coach_net | 2008-08-04 11:27 | イベントのお知らせ

緊急作成!

緊急作成!!

8月3日 参加者全員のために、特別プレゼントが完成しました。


コーチングが身近になり、すぐに役立つオリジナル小冊子
「小さなコーチングの大きなポイント」
を山口チャプターの勉強会に来て下さった方にプレゼント致します。

ぜひ、8月3日。周南市でお会いしましょう。
(会員の方にもお届けします)

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by y-coach_net | 2008-08-03 23:37 | イベントのお知らせ