小さなコーチングの大きなポイント…「新人を育てるスタッフになる」
2008年 06月 27日
「簡潔に話す」編をお休みして
職場でのの体験を紹介したいと思います。
職場でコミュニケーションの勉強会をしました。
始まりは新人のトレーニングをどのようにするかという課題でした。7月から新人が入社するのでその新人をトレーニングする担当者が必要になります。サブリーダーのMさんは「スタッフのMさんに新人のトレーニングをまかせたい」と伝えてきました。
しかしマネージャのFさんには「新人の教育はリーダーかサブリーダーにまかせ、その新人スタッフが早く安心して仕事ができるようにしてあげたい」という気持ちがあり、それをサブリーダーMさんに伝えました。
しかしサブリーダーMさんは「私はスタッフMさんに新人トレーニングを通じて成長してほしい。私が責任持ってスタッフMさんをサポートします」と強い気持ちでマネージャFさんに伝えました。そしてこの宣言が勉強会へつながって行きます。
マネージャFさんにとってもMさんのこの言葉はとても嬉しかったようです。そこでリーダーYさんとサブリーダーMさんそしてスタッフMさんAさんの4人で、事前に新人とのコミュニケーションの指針を作るミーティングをすることを前提にサブリーダーMさんの提案を実行することにしました。
その後マネージャFさんとリーダーYさんの話し合いで、僕にその勉強会のガイド(※僕の職場では、課題や目標に応じてチームを組んでミーティングを走らせるタスクミーティングというシステムを使っていて、その進行を促す担当者を「ガイド」と呼称しています)をしてほしいというリクエストを受けることになりました。
これは私にとっても二つの意味で嬉しいことでした。ひとつはサブリーダーMさんがスタッフの成長を目標に積極的な提案をしてくれたこと。もうひとつは僕の勉強会の進行に信頼を寄せてもらったこと。こうなると俄然いい勉強会にしようと気持ちが高まりますし、同時に失敗できない…というよりもしたくないという若干震えるような緊張とプレッシャーも生まれました。
と同時にこのプレッシャーは勉強会に参加するスタッフにおいてはさらに大きなもののようでスタッフのMさん、Aさんなどは勉強会前すでに腹痛(もちろん神経性ですね)を感じていたそうです。それほどコミュニケーションを取り、コミュニケーションを向上させていくことの壁は高いことなのです。
別の部署のリーダーでこれも自発的に参加を希望してくれたリーダーKさんを加え、僕+6名=7名で勉強会はスタートしました。
リーダー、サブリーダーに比べ、スタッフMさんAさんとの僕のコミュニケーション量はかなり少ないのが現状です。そこで僕はミーティングの目標を最初に3つ設定し、勉強会の冒頭でそれを彼らに伝えました。
①僕を含め今ここでスタッフ同士のコミュニケーションをたくさんとること
②新しく仕事を始めるスタッフに対して僕たち7人がどのような考え方と行動で
コミュニケーションをとるのが適切かを発見すること
③勉強会が終わった後、僕たちの行動が具体的に変化していること
僕は例えば30分の勉強会をやったとしてその30分後に、たとえ1つでも具体的な成長や変化が生まれなければその勉強会は意味がないと考えています。
今回の勉強会もそのことを6名にはっきりと伝えたのですが6名ともしっかりと受けとめてくれました。考えてみればそれもそのはずで、この勉強会は彼らが彼ら自身の学びのために、彼らが作っている彼ら自身のものだからです。
その意味でこの勉強会はこの時点ですでに成功していたと言えます。
目標を明確にしたあと僕がやるべきことは彼らの中にすでにある答えをいかにして引き出すかだけでした。6人それぞれもうすでに今まで新人とのコミュニケーションをとった経験を体の中に蓄えているのですからもう新しく伝えるべきことはありません。ただそれを引き出す作業をすればいい。
1人1人に私がコーチングをやっていては時間がありませんし、またスタッフが主体的に行う勉強会の場合それは望ましくありません。そこで2人1組のチームを3チームつくり、「今までの新人とのコミュニケーションの良かった点と課題点を発見する」という目標を伝え、1体1の対話で経験と知識を引き出すことにしました。
(今回は、ほとんど自由にコミュニケーションしてもらいましたが、例えば2人チームのうち1名を「ガイド」と決めてコミュニケーションを進行するとよりスピードと密度があがります)
僕も含め人の性格や資質は本当に多種多様です。感情表現が苦手だけれども一生懸命やわらかい表情を相手に向けるスタッフ。もともと言葉にするのが苦手でそれでも相手とコミュニケーションをするために必死で言葉を紡ぎ出すスタッフなどなど…
その中で1人のスタッフからハッと僕の気持ちを惹きつける言葉が発せられました。
「私のコミュニケーションの問題点を言ってくれる?」
発したのはサブリーダーのMさん。後輩スタッフを成長させたいという意志を持ってこの勉強会の起点になったMさんです。深い感心が僕の内面に生まれていました。
自分の課題点へのフィードバックを求める…
トレーニングされたコーチでも簡単なことではありません。コーチングのトレーニングの中で「相手にフィードバックを求める」という公式がありますから多くのコーチがそれを実践していますが形式のレベルを超えて実際に役立てることは相当に難しいことです。
しかしサブリーダーMさんはそれを「さらり」(かどうかはわかりませんが)と、そして「意志的」に言ってのけた。「自分が学ぶ」そして「相手に学ばせる」という気持ちがなければ出来ないことです。
僕はこのような出来事を「コミュニケーションの沸騰点」と呼んでいます。
僕の経験ではこの「沸騰点」が生まれた勉強会やセミナーはすべて成功します。逆にこれが無い勉強会やセミナーは単なる情報伝達の場所で終わることが多い。僕にとっての勉強会やコーチングセミナーはこの「沸騰点」を発見するための探求の場とも言えます。
勉強会のその後の流れは思ったとおり成果の多いものでした。サブリーダーMさんの対話の相手スタッフMさん、言葉にして表現するのが苦手なAさんを始め、6人がそれぞれ自分のコミュニケーションの良い点と課題点を彼らなりに表現していきます。
「その場で承認する」「説明は具体的にする」「一日の終わりにフィードバックする」「マイナスの感情を表情に出さない決意をする」「相手のペースに合わせる」などなど…彼らが彼ら自身の表現で自分の気づきを言葉にしていく…
自発的に発見した良い点や課題点への気づきは必ず行動の変化を生み出します。「沸騰点」から「気づき」の表現まで、僕の役割はせいぜい彼らの言葉をなるべく簡潔に要約するぐらいのことになってしまいました。(それはそれで「自分のコーチとしての腕の見せ所!」とばかりに1人相撲ながら力を入れて頑張ったとこですが…)
最後に新人に具体的な技術を教えるポイントとして、僕から
①やってみせる=目で見せる
②説明する=耳で理解させる
③させてみる=体で感じさせる
④承認とフィードバックをする=意欲を引き出す
ことをアドバイスして勉強会は終わりました。7人で共につくりあげた1時間と30分の勉強会でした。
その後サブリーダーMさんがマネージャFさんに語ったところによると、新人への教育や声かけを担わなければならないスタッフMさんやAさんは「より元気になって帰っていった」そうで僕にとってもとても嬉しい情報でした。
この成果を確実なものにするには、僕、マネージャ、リーダー、サブリーダーからスタッフへの今後の主体的かつ継続的な「承認」と「フィードバック」が不可欠ですが、その一歩として成果のあるスタートを切ることができました。
この「実のつまったタネ」を大事に育てていきたいと考えています。
研修委員:黒木雅裕
職場でのの体験を紹介したいと思います。
職場でコミュニケーションの勉強会をしました。
始まりは新人のトレーニングをどのようにするかという課題でした。7月から新人が入社するのでその新人をトレーニングする担当者が必要になります。サブリーダーのMさんは「スタッフのMさんに新人のトレーニングをまかせたい」と伝えてきました。
しかしマネージャのFさんには「新人の教育はリーダーかサブリーダーにまかせ、その新人スタッフが早く安心して仕事ができるようにしてあげたい」という気持ちがあり、それをサブリーダーMさんに伝えました。
しかしサブリーダーMさんは「私はスタッフMさんに新人トレーニングを通じて成長してほしい。私が責任持ってスタッフMさんをサポートします」と強い気持ちでマネージャFさんに伝えました。そしてこの宣言が勉強会へつながって行きます。
マネージャFさんにとってもMさんのこの言葉はとても嬉しかったようです。そこでリーダーYさんとサブリーダーMさんそしてスタッフMさんAさんの4人で、事前に新人とのコミュニケーションの指針を作るミーティングをすることを前提にサブリーダーMさんの提案を実行することにしました。
その後マネージャFさんとリーダーYさんの話し合いで、僕にその勉強会のガイド(※僕の職場では、課題や目標に応じてチームを組んでミーティングを走らせるタスクミーティングというシステムを使っていて、その進行を促す担当者を「ガイド」と呼称しています)をしてほしいというリクエストを受けることになりました。
これは私にとっても二つの意味で嬉しいことでした。ひとつはサブリーダーMさんがスタッフの成長を目標に積極的な提案をしてくれたこと。もうひとつは僕の勉強会の進行に信頼を寄せてもらったこと。こうなると俄然いい勉強会にしようと気持ちが高まりますし、同時に失敗できない…というよりもしたくないという若干震えるような緊張とプレッシャーも生まれました。
と同時にこのプレッシャーは勉強会に参加するスタッフにおいてはさらに大きなもののようでスタッフのMさん、Aさんなどは勉強会前すでに腹痛(もちろん神経性ですね)を感じていたそうです。それほどコミュニケーションを取り、コミュニケーションを向上させていくことの壁は高いことなのです。
別の部署のリーダーでこれも自発的に参加を希望してくれたリーダーKさんを加え、僕+6名=7名で勉強会はスタートしました。
リーダー、サブリーダーに比べ、スタッフMさんAさんとの僕のコミュニケーション量はかなり少ないのが現状です。そこで僕はミーティングの目標を最初に3つ設定し、勉強会の冒頭でそれを彼らに伝えました。
①僕を含め今ここでスタッフ同士のコミュニケーションをたくさんとること
②新しく仕事を始めるスタッフに対して僕たち7人がどのような考え方と行動で
コミュニケーションをとるのが適切かを発見すること
③勉強会が終わった後、僕たちの行動が具体的に変化していること
僕は例えば30分の勉強会をやったとしてその30分後に、たとえ1つでも具体的な成長や変化が生まれなければその勉強会は意味がないと考えています。
今回の勉強会もそのことを6名にはっきりと伝えたのですが6名ともしっかりと受けとめてくれました。考えてみればそれもそのはずで、この勉強会は彼らが彼ら自身の学びのために、彼らが作っている彼ら自身のものだからです。
その意味でこの勉強会はこの時点ですでに成功していたと言えます。
目標を明確にしたあと僕がやるべきことは彼らの中にすでにある答えをいかにして引き出すかだけでした。6人それぞれもうすでに今まで新人とのコミュニケーションをとった経験を体の中に蓄えているのですからもう新しく伝えるべきことはありません。ただそれを引き出す作業をすればいい。
1人1人に私がコーチングをやっていては時間がありませんし、またスタッフが主体的に行う勉強会の場合それは望ましくありません。そこで2人1組のチームを3チームつくり、「今までの新人とのコミュニケーションの良かった点と課題点を発見する」という目標を伝え、1体1の対話で経験と知識を引き出すことにしました。
(今回は、ほとんど自由にコミュニケーションしてもらいましたが、例えば2人チームのうち1名を「ガイド」と決めてコミュニケーションを進行するとよりスピードと密度があがります)
僕も含め人の性格や資質は本当に多種多様です。感情表現が苦手だけれども一生懸命やわらかい表情を相手に向けるスタッフ。もともと言葉にするのが苦手でそれでも相手とコミュニケーションをするために必死で言葉を紡ぎ出すスタッフなどなど…
その中で1人のスタッフからハッと僕の気持ちを惹きつける言葉が発せられました。
「私のコミュニケーションの問題点を言ってくれる?」
発したのはサブリーダーのMさん。後輩スタッフを成長させたいという意志を持ってこの勉強会の起点になったMさんです。深い感心が僕の内面に生まれていました。
自分の課題点へのフィードバックを求める…
トレーニングされたコーチでも簡単なことではありません。コーチングのトレーニングの中で「相手にフィードバックを求める」という公式がありますから多くのコーチがそれを実践していますが形式のレベルを超えて実際に役立てることは相当に難しいことです。
しかしサブリーダーMさんはそれを「さらり」(かどうかはわかりませんが)と、そして「意志的」に言ってのけた。「自分が学ぶ」そして「相手に学ばせる」という気持ちがなければ出来ないことです。
僕はこのような出来事を「コミュニケーションの沸騰点」と呼んでいます。
僕の経験ではこの「沸騰点」が生まれた勉強会やセミナーはすべて成功します。逆にこれが無い勉強会やセミナーは単なる情報伝達の場所で終わることが多い。僕にとっての勉強会やコーチングセミナーはこの「沸騰点」を発見するための探求の場とも言えます。
勉強会のその後の流れは思ったとおり成果の多いものでした。サブリーダーMさんの対話の相手スタッフMさん、言葉にして表現するのが苦手なAさんを始め、6人がそれぞれ自分のコミュニケーションの良い点と課題点を彼らなりに表現していきます。
「その場で承認する」「説明は具体的にする」「一日の終わりにフィードバックする」「マイナスの感情を表情に出さない決意をする」「相手のペースに合わせる」などなど…彼らが彼ら自身の表現で自分の気づきを言葉にしていく…
自発的に発見した良い点や課題点への気づきは必ず行動の変化を生み出します。「沸騰点」から「気づき」の表現まで、僕の役割はせいぜい彼らの言葉をなるべく簡潔に要約するぐらいのことになってしまいました。(それはそれで「自分のコーチとしての腕の見せ所!」とばかりに1人相撲ながら力を入れて頑張ったとこですが…)
最後に新人に具体的な技術を教えるポイントとして、僕から
①やってみせる=目で見せる
②説明する=耳で理解させる
③させてみる=体で感じさせる
④承認とフィードバックをする=意欲を引き出す
ことをアドバイスして勉強会は終わりました。7人で共につくりあげた1時間と30分の勉強会でした。
その後サブリーダーMさんがマネージャFさんに語ったところによると、新人への教育や声かけを担わなければならないスタッフMさんやAさんは「より元気になって帰っていった」そうで僕にとってもとても嬉しい情報でした。
この成果を確実なものにするには、僕、マネージャ、リーダー、サブリーダーからスタッフへの今後の主体的かつ継続的な「承認」と「フィードバック」が不可欠ですが、その一歩として成果のあるスタートを切ることができました。
この「実のつまったタネ」を大事に育てていきたいと考えています。
研修委員:黒木雅裕
by y-coach_net
| 2008-06-27 00:28
| 黒木さんのコーチング