安心と変化のコミュニケーション…「安心と変化 1」
2008年 08月 13日
私の職場で「遅刻をしがちなご利用者を減らしたい」という課題があり、解決のためのチームを組んでミーティングをスタートした。
最初はスタッフの、ご利用者への心理的な向き合い方の見直しだ。あるスタッフからまず最初に出た「ご利用者へは下から接するのが必要なので…」という言葉で今の基本スタンスが推測できた。
どうやらご利用者へ丁寧に接することと迎合することを混同しているようだ。
丁寧さの無い意思表示はわがままと同じだし、また意思表示の無い丁寧さは単なる卑屈さにほかならない。どちらにしても相手に反発もしくは増長をもたらし対等な関係を結ぶには不適切な対応といえる。
ここはまずはティーチングからだ。職場のビジョンに照らして、丁寧である必要はあるけれどもそれは私たちがご利用者に下から上の目線で接することではないことを説明した。
私たちの仕事の役割と責任を明確にし、そこから逆算してご利用者に守ってもらうべき規則と義務を明確にする作業だ。
その作業を通じて出てきたのは「水平な目線でご利用者に接する」という言葉だ。
スタッフは当然果たすべき役割を責任を持って果たす。そしてご利用者にも守るべき規則と義務を丁寧にしかし明確に伝える…スタンスの変化によってスタッフの中に何をする必要があるのかそしてどうしたいのかが生まれ始める。
チームからは、遅刻の多いご利用者の、その頻度と理由に応じて「青対応」「黄対応」「赤対応」という3つのパターンを作成し、シミュレーションによるトレーニングを行うアイデアが出てきた。
対応マニュアルをつくり、机上での読み合わせを終え、スタッフが役割を分担していよいよシミュレーションのスタートだ。
ここまでグループコーチングでイメージを充分に明確化しただけに、その後展開した光景は逆にとても興味深いものだった。
それだけ水平な目線のイメージを組み立てたにも関わらず、あるいは目の前に自分たちでつくった対応の手順表があるにも関わらず、スタッフの多くが反射的に過去の行動パターン、すなわち「下から接する」対応に戻ってしまうのだ。
人によっては手に持った手順表に目を落としているのに今までどおりの発言に終始する。
事前の決定でもっとも大切なことは、「ご利用者に時間を守ることをリクエストする」ということだ。ところが実際にシミュレーションをスタートしてみると…「リクエスト」どころか「依頼」悪くすると「懇願」してしまうありさまだ。
人間の「こころの癖」はとても強固なものだ。
「人間脳」より上位にある「動物脳」あるいは「は虫類脳」の「不安」や「欲動」が「こころの癖」の基盤なので、「意識して変化させる」という「人間脳」の働きだけでそのパターンを変化させることはかなり困難だ。
コーチングしたりあるいは自分がコーチングを受けたりしても、なかなか変化が現れないことがあるのもこのあたりに理由がある場合が多い。
行動の変化をもたらすには、最低でもクライアントの「動物脳」にアクセスする必要があるのだ。
「こころの癖」の強固さをあらためて感じるとともに、事前にプレッシャーを体験し、プレッシャーがあったとしても行動は変化させられること、そしてそれをリーダーやマネージャーと共有して安心感を持つことの大切さを再認識する結果になった。
「プレッシャー」とは状況やコミュニケーションに対する「恐怖感」と「不安感」だ。
「恐怖感」と「不安感」は、「人間脳」の作り出したイメージを引き金にして生まれる「動物脳」と「は虫類脳」による情動的、感覚的反射だ。
だから視覚、聴覚、体性感覚および思考のすべてに働きかけ、さらには自分がチームの一員として安全に行動していることを実感できて、初めてその反射を乗り越え、行動を変化させることができることになる。
そこでミュレーションの第一目標を、スタッフ間のコミュニケーション強化によって「安心感」を生み出すことに変更し、対話の量に焦点をあて、それを増大させながらトレーニングをすすめた。
同時に「できていないところ」「こうすればもっとよくなるところ」のフィードバックを私が担当し、コーチングのセオリー通り「記述的に伝える」「一人称で自分の感じたことを伝える」を行った。
シミュレーションでのスタッフの発言や笑顔が高まるにつれ、かれらの対応パターンが「水平な目線」に改善されていく。
「安心感は変化の最低条件」…こういう体験の度に頭に浮かぶ言葉だ。
遅刻率90%削減を目標して、改善スタート。あまり間をおかず結果が出てきた。
1週目…77%減
2週目…53%減
結果の出やすい初期の成果としても立派なものだ。
3週目、4週目とどのような変化が生まれるか興味深いところだ。その後のフォローミーティングでさらに対応のステップアップを図ったのでおそらく結果は向上するだろう。
だが仕事にはいつも「予測不可能性」がある。だからいつも「安心と変化」のコミュニケーションを意識していこうと考えている。
研修委員:黒木雅裕
最初はスタッフの、ご利用者への心理的な向き合い方の見直しだ。あるスタッフからまず最初に出た「ご利用者へは下から接するのが必要なので…」という言葉で今の基本スタンスが推測できた。
どうやらご利用者へ丁寧に接することと迎合することを混同しているようだ。
丁寧さの無い意思表示はわがままと同じだし、また意思表示の無い丁寧さは単なる卑屈さにほかならない。どちらにしても相手に反発もしくは増長をもたらし対等な関係を結ぶには不適切な対応といえる。
ここはまずはティーチングからだ。職場のビジョンに照らして、丁寧である必要はあるけれどもそれは私たちがご利用者に下から上の目線で接することではないことを説明した。
私たちの仕事の役割と責任を明確にし、そこから逆算してご利用者に守ってもらうべき規則と義務を明確にする作業だ。
その作業を通じて出てきたのは「水平な目線でご利用者に接する」という言葉だ。
スタッフは当然果たすべき役割を責任を持って果たす。そしてご利用者にも守るべき規則と義務を丁寧にしかし明確に伝える…スタンスの変化によってスタッフの中に何をする必要があるのかそしてどうしたいのかが生まれ始める。
チームからは、遅刻の多いご利用者の、その頻度と理由に応じて「青対応」「黄対応」「赤対応」という3つのパターンを作成し、シミュレーションによるトレーニングを行うアイデアが出てきた。
対応マニュアルをつくり、机上での読み合わせを終え、スタッフが役割を分担していよいよシミュレーションのスタートだ。
ここまでグループコーチングでイメージを充分に明確化しただけに、その後展開した光景は逆にとても興味深いものだった。
それだけ水平な目線のイメージを組み立てたにも関わらず、あるいは目の前に自分たちでつくった対応の手順表があるにも関わらず、スタッフの多くが反射的に過去の行動パターン、すなわち「下から接する」対応に戻ってしまうのだ。
人によっては手に持った手順表に目を落としているのに今までどおりの発言に終始する。
事前の決定でもっとも大切なことは、「ご利用者に時間を守ることをリクエストする」ということだ。ところが実際にシミュレーションをスタートしてみると…「リクエスト」どころか「依頼」悪くすると「懇願」してしまうありさまだ。
人間の「こころの癖」はとても強固なものだ。
「人間脳」より上位にある「動物脳」あるいは「は虫類脳」の「不安」や「欲動」が「こころの癖」の基盤なので、「意識して変化させる」という「人間脳」の働きだけでそのパターンを変化させることはかなり困難だ。
コーチングしたりあるいは自分がコーチングを受けたりしても、なかなか変化が現れないことがあるのもこのあたりに理由がある場合が多い。
行動の変化をもたらすには、最低でもクライアントの「動物脳」にアクセスする必要があるのだ。
「こころの癖」の強固さをあらためて感じるとともに、事前にプレッシャーを体験し、プレッシャーがあったとしても行動は変化させられること、そしてそれをリーダーやマネージャーと共有して安心感を持つことの大切さを再認識する結果になった。
「プレッシャー」とは状況やコミュニケーションに対する「恐怖感」と「不安感」だ。
「恐怖感」と「不安感」は、「人間脳」の作り出したイメージを引き金にして生まれる「動物脳」と「は虫類脳」による情動的、感覚的反射だ。
だから視覚、聴覚、体性感覚および思考のすべてに働きかけ、さらには自分がチームの一員として安全に行動していることを実感できて、初めてその反射を乗り越え、行動を変化させることができることになる。
そこでミュレーションの第一目標を、スタッフ間のコミュニケーション強化によって「安心感」を生み出すことに変更し、対話の量に焦点をあて、それを増大させながらトレーニングをすすめた。
同時に「できていないところ」「こうすればもっとよくなるところ」のフィードバックを私が担当し、コーチングのセオリー通り「記述的に伝える」「一人称で自分の感じたことを伝える」を行った。
シミュレーションでのスタッフの発言や笑顔が高まるにつれ、かれらの対応パターンが「水平な目線」に改善されていく。
「安心感は変化の最低条件」…こういう体験の度に頭に浮かぶ言葉だ。
遅刻率90%削減を目標して、改善スタート。あまり間をおかず結果が出てきた。
1週目…77%減
2週目…53%減
結果の出やすい初期の成果としても立派なものだ。
3週目、4週目とどのような変化が生まれるか興味深いところだ。その後のフォローミーティングでさらに対応のステップアップを図ったのでおそらく結果は向上するだろう。
だが仕事にはいつも「予測不可能性」がある。だからいつも「安心と変化」のコミュニケーションを意識していこうと考えている。
研修委員:黒木雅裕
by y-coach_net
| 2008-08-13 00:39
| 黒木さんのコーチング